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ゆめまちテラスえち

ゆめまちテラスえちは、滋賀県愛知郡愛荘町にある歴史的建築物である旧愛知郡役所を再利用した町営施設です。旧愛知郡役所は、日本の洋風建築の代表的な手法である木造下見板張りを用いた貴重な公共建築物であり、2018年より「ゆめまちテラスえち」という名称で親しまれています。本施設は、愛荘町の地域交流と文化の発信拠点として、多くの人々に利用されています。

旧愛知郡役所の歴史

竣工と郡役所時代

旧愛知郡役所は、1922年(大正11年)5月に竣工し、4年間にわたり郡区町村編制法に基づく愛知郡役所として利用されていました。しかし、1926年(大正15年)7月に郡役所制度が廃止された後は、愛知郡教育会へ移管され、さらに滋賀県、そして1937年(昭和12年)には愛知郡農会に無償譲渡されました。戦後には、地元の農業協同組合が敷地を共有し、建物はJA東びわこや湖東農業協同組合、西小椋農業協同組合などの所有となりました。

保存活動と愛荘町への移管

その後、2016年に愛荘町が土地と建物を取得し、旧愛知郡役所は町文化財に指定されました。愛荘町は保存活動を進めると同時に、この歴史的建物を地域交流の場として再利用することを決定し、「ゆめまちテラスえち」という新たな施設として生まれ変わりました。

建築の特色

西洋風の外観

旧愛知郡役所の建物は、木造2階建ての寄棟造りで、桟瓦葺の屋根を持っています。外観は左右対称を基本としていますが、一部の窓の形状などに非対称性が見られるのが特徴です。また、建物の正面は北を向いており、全体として落ち着いた趣があります。特に、木造の下見板張りの外壁は日本の伝統的な技法を取り入れつつ、西洋風のデザインを反映させたものであり、当時の地域の近代化を象徴する建築物として評価されています。

希少な郡役所建築

旧愛知郡役所は、全国的にも数少ない郡役所建築の遺構の一つです。滋賀県内に現存する郡役所建築としては唯一のもので、その歴史的価値が高く評価されています。建物は竣工当時の姿をほぼそのままの形で残しており、歴史的な建築物としての保存状態も良好です。

保存と再利用の取り組み

保存運動の始まり

長らく建物はJAの所有となっていましたが、2003年には当時の愛知川町がJA東びわことの間で建物の賃貸借契約を結び、保存活用に向けた取り組みが開始されました。しかし、2010年末に契約が満了し、保存を求める住民団体と、取得費用を懸念する住民グループとの間で意見が対立しました。その後、愛荘町が土地と建物を取得する契約を結び、保存に向けた具体的な取り組みが進められました。

愛荘町による取得と活用計画

2016年2月、愛荘町がJAから土地と建物を取得する契約を結び、旧愛知郡役所の保存と再利用に向けた大きな一歩を踏み出しました。その後、建物の耐震補強工事や改修工事が進められ、2018年10月に保存工事が完了しました。町はこの建物を「愛荘町ゆめまちテラスえち」として活用し、地域住民や観光客が集う交流の場として提供することを目指しました。

ゆめまちテラスえちの役割と魅力

地域交流の拠点としての活用

「ゆめまちテラスえち」は、地域の歴史的資産を活用した交流施設として、多くの人々に親しまれています。2019年1月18日には正式にオープンし、町内外から多くの訪問者が集まりました。施設内では、地域の伝統工芸品や文化の紹介が行われており、特に近江上布のPRショップでは、日用雑貨や洋服などが販売されています。

近江上布のPRショップ

2020年4月には、近江上布のPRショップがゆめまちテラスえち内に設置されました。このショップでは、地域の伝統的な織物である近江上布の魅力を広めるため、さまざまな製品が販売されており、訪れた観光客が実際に手に取ってその品質を感じることができます。

未来への展望

地域文化の発信と観光振興

ゆめまちテラスえちは、愛荘町の歴史的建築物を活用した文化発信拠点として、今後もさまざまなイベントや展示を通じて地域文化を広く発信していく予定です。また、観光客にとっては歴史や文化に触れる貴重な場となり、地域経済の活性化にも貢献することが期待されています。

地域と共に歩む施設

ゆめまちテラスえちは、旧愛知郡役所という歴史的建築物を大切に保存しながら、現代の地域交流施設として新たな役割を担っています。愛荘町のシンボル的存在として、地域住民と観光客の両方に愛され続ける場所となるでしょう。

Information

名称
ゆめまちテラスえち

彦根・近江八幡

滋賀県