教林坊は、滋賀県近江八幡市安土町に位置する天台宗の寺院で、山号は繖山(きぬがさやま)といいます。本尊は赤川観音で、聖徳太子によって推古天皇13年(605年)に創建されました。この寺院は書院の「掛軸庭園」や「遠州庭園」などが有名で、秋には境内全体が紅葉に染まり、多くの観光客が訪れます。また、桃山時代の巨石を使った庭園でも知られています。
教林坊は、推古天皇13年(605年)に聖徳太子が創建しました。本尊である赤川観音は、太子自身が彫刻したと伝えられる石仏で、寺の石窟に祀られています。寺名は、聖徳太子が林の中で説法を行ったことに由来します。
教林坊は、織田信長の台頭による戦国時代の混乱の中で一時的に衰退しました。しかし、天正13年(1585年)には再興され、寺の姿を取り戻しました。
1975年から1995年にかけては無住の寺院となり荒廃していましたが、その後、再び復興が進み、現在のような美しい寺院へと生まれ変わりました。特に庭園の美しさは名高く、四季折々の風景が楽しめます。
教林坊の見どころのひとつが、書院に広がる「掛軸庭園」です。この庭園は、書院から眺めると山水画のように見えることからその名がつけられました。小堀遠州によって作庭されたと伝えられる「遠州庭園」は、巨石を使った枯滝や池泉回遊式庭園で、庭全体が自然と調和しています。
本堂には、等身大の十一面観音や仁王像、願掛けの不動明王などが祀られていますが、特に注目すべきは、石窟内に安置されている赤川観音です。この観音は、聖徳太子が作ったとされる石仏で、多くの信仰を集めています。
境内は至るところ苔むした古刹の雰囲気が漂い、庭には巨石が点在しています。これらの石は、静かで風格のある佇まいを感じさせ、訪れる人々に安らぎを与えます。著名な文化人、白洲正子が著書『かくれ里』で「石の寺」として紹介しており、その静謐な風景に感銘を受けたことが伝わっています。
教林坊には、江戸時代に建てられた茅葺きの書院や土蔵、山門があります。これらの建物は庭園と一体となって「侘び寂び」の風情を醸し出し、特に書院からの眺めは四季折々に変わる日本の自然美を堪能できるため、観光客に大変人気があります。
教林坊の書院、山門、釈迦如来坐像は、近江八幡市の指定有形文化財として登録されています。また、庭園も「遠州庭園」「普陀落の庭」として近江八幡市の名勝に指定されており、歴史的価値が高い文化遺産です。
教林坊では、毎年11月15日から12月5日にかけて、紅葉のライトアップが行われます。日中とは異なる幻想的な雰囲気の中で、紅葉に染まった庭園を楽しむことができます。開門時間は17:30から19:00まで、最終受付は18:30です。
教林坊では、毎年4月と10月に「春秋会」というお茶会が催され、伝統的な茶道の文化を体験することができます。また、香道の会も行われており、日本の伝統文化に触れる貴重な機会となっています。
教林坊は、毎年4月から6月、10月の土日祝日には「緑の公開」として一般公開されます。また、11月1日から12月15日までの紅葉シーズンには毎日拝観可能です。拝観料は、緑の公開時には大人600円、小中学生200円ですが、紅葉の公開時には大人1000円、小中学生300円となります。
拝観時間は9:30から16:30までで、紅葉ライトアップ時には17:30から19:00までの夜間拝観が追加されます。紅葉シーズンには、昼間の拝観と夜間のライトアップを組み合わせて楽しむことができ、異なる雰囲気を体験できます。
教林坊へは、JR東海道本線(琵琶湖線)安土駅から徒歩約60分、またはタクシーで約10分です。また、平日のみ運行されている「あかこんバス」を利用し、安土駅から石寺東出停留所で下車、徒歩5分というルートもあります。
車でのアクセスも便利で、名神高速道路の竜王ICから約20分、彦根ICからは約50分です。駐車場は普通車80台、大型バス8台が収容可能です。ただし、大型バスでの訪問時には事前連絡が必要です。
教林坊の近くには、同じく歴史的な天台宗の寺院「観音正寺」と、戦国時代に織田信長との戦いで有名になった「観音寺城」があります。これらのスポットも一緒に訪れることで、地域全体の歴史と文化を深く知ることができるでしょう。
教林坊の近くには、安土城の歴史や発掘品を展示する「滋賀県立安土城考古博物館」もあり、戦国時代や織田信長に興味のある方にはおすすめのスポットです。