立木神社は、滋賀県草津市に位置する歴史的な神社です。東海道沿いにある草津宿に鎮座しており、厄除開運や交通安全の神社として広く信仰を集めています。旧社格は郷社です。立木神社は地域の信仰の中心として、多くの参拝者が訪れる名所となっています。
社伝によれば、立木神社は称徳天皇の時代、神護景雲元年（767年）に創建されました。武甕槌命（たけみかづちのみこと）が常陸国（現在の茨城県）鹿島神宮から白鹿に乗って大和国（現在の奈良県）春日大社への勧請の旅の途中、この地に到着しました。武甕槌命は持っていた柿の鞭を地面に刺し「この木が生え付くならば我永く大和国三笠の山（春日大社）に鎮まらん」と述べました。その結果、柿の木が成長したため、里人はこの木を崇め、社殿を建立して武甕槌命を祀り、神社を「立木神社」と称したのが始まりです。
立木神社は、春日大社と兄弟の間柄にあたりますが、春日大社の創建は神護慶雲2年（768年）であり、立木神社はその前身であるため、兄といえます。
宝亀8年（777年）、大旱魃に見舞われた際、光仁天皇は中臣諸魚に命じて立木神社で雨乞いを行わせました。その祈願の結果、見事に大雨が降り、光仁天皇は感謝の意を込めて新たな社殿を造営しました。さらに「立木大明神」の勅額を賜り、正一位の神階を授けられたという説も伝わっています。
延暦20年（801年）には、征夷大将軍の坂上田村麻呂が蝦夷征討の際に立木神社を訪れ、道中安全と厄除開運を祈願し、大般若経一部を寄進しました。このように、立木神社は天皇や将軍との深い関わりを持つ歴史的な神社です。
室町時代の長享元年（1487年）、室町幕府将軍足利義尚が近江守護六角高頼を征伐するために鈎に陣を敷いた際、立木神社に武運長久を祈願し、四脚門（現在の神門）を寄進しました。江戸時代の正保2年（1645年）には、膳所藩主石川忠総が社領23石を寄進しています。
立木神社の主祭神は、武甕槌命です。武甕槌命は武勇の神として知られ、厄除けや交通安全の神として信仰されています。社殿には、主祭神を祀る本殿があり、多くの参拝者が訪れます。
境内には、多賀大社や熊野神社など、五社や七社と呼ばれる摂末社が鎮座しています。また、立木稲荷社や弁天池なども見どころの一つです。これらの摂末社は、立木神社の長い歴史と地域の信仰の広がりを象徴しています。
立木神社の境内には、滋賀県指定の天然記念物であるウラジロガシがそびえています。この御神木は推定樹齢400年とされ、神社の歴史を感じさせる存在です。特に鳥居の横に立つウラジロガシは、訪れる人々に深い感銘を与えます。
立木神社の境内には、草津市指定有形民俗文化財である石造道標もあります。この道標は、延宝8年（1680年）に造られたもので、草津宿の東海道と中山道の分岐点に設置されていました。現在では、その位置には文化13年（1816年）の常夜灯の道標が残されています。
立木神社では、毎年5月3日に例大祭が開催されます。この祭りは、明治以降、旧暦の4月初巳の日に行われており、地域の人々にとって重要な行事です。「さんやれ踊り」が奉納され、地元の矢倉町から多くの参加者が集まります。
立木神社は、JR琵琶湖線（東海道本線）やJR草津線の草津駅から徒歩15分、またはJR琵琶湖線南草津駅から徒歩20分の場所にあります。両駅からは「まめバス」が運行しており、「立木神社前」停留所で下車すると徒歩2分で神社に到着します。
自動車でのアクセスも便利です。新名神高速道路の草津田上ICからは車で約17分、名神高速道路の栗東ICからは約12分で到着します。駐車場も完備されているため、車での参拝も安心です。
立木神社は、交通安全や厄除けの神社として広く信仰を集めると同時に、その歴史的価値や文化財の保護にも力を入れています。武甕槌命を祀るこの神社は、地域の信仰の中心であり、訪れる人々に深い歴史と伝統を感じさせる場所です。交通の便も良く、草津市を訪れる際にはぜひ立ち寄りたいスポットです。