野洲川は、滋賀県を流れる淀川水系の一級河川であり、琵琶湖への流入河川としては最長です。その美しい流れと歴史的な背景から、地域の重要な自然資源となっています。
野洲川は、古くから「近江太郎」と呼ばれることがあり、滋賀県内でも特に代表的な川です。『日本書紀』や『古事記』などの歴史書にもその名が記されており、壬申の乱の際の合戦地「安河の浜」や、「安国造（やすのくにのみやつこ）」に関連する地名としても知られています。また、近江高天原説によれば、天安河を野洲川と比定する説もあります。
鎌倉時代の『海道記』では、「八洲川」という名称が記され、かつて野洲川河口に八つの洲があったことからこの名が付いたとされています。さらに、甲賀市水口町では杣川と合流し、そこから下流は「横田川」とも呼ばれていました。
野洲川の源流は、標高1209mの御在所岳にあります。鈴鹿山脈の西側の斜面を流れ、甲賀市土山町にある野洲川ダムへと向かいます。土山町を通ると、青土ダムに到達します。これらのダムは農業用水の供給や洪水防止の役割を果たしています。
野洲川は、急峻な地形を持つため水害を引き起こすことが多々ありましたが、地下に潜って伏流水となる部分もあり、かつては水不足に悩まされることもありました。川の中流から下流にかけては、田村川や杣川と合流しながら、栗東市や野洲市を経て琵琶湖へと注ぎます。
美しい三上山（近江富士）も野洲川の流域に位置しており、古くから信仰の対象となってきました。1981年には新放水路が完成し、水害防止策が強化されています。
野洲川の上流部は降水時の保水機能が低く、風化や浸食が進みやすいため、大雨時には大量の土砂が流出します。下流域では氾濫原を形成し、急速に湖成三角州が成長しました。このため、一部の区間では堤内地盤よりも高い「天井川」となり、その堤防は7〜8メートル、場所によっては10メートルにも達しています。
野洲川の歴史は古く、琵琶湖近くで派川を多く形成していたことから「八洲川」とも呼ばれていました。かつての流路は、守山市や草津市を通り、琵琶湖に流れ込んでいましたが、明治時代には境川として知られる小規模な河川へと変わりました。
さらに、江西川もかつての主流の一つと考えられていますが、現在はその痕跡を見ることはできません。
野洲川の下流域では、弥生時代から古墳時代にかけて、多くの遺跡が発見されています。これらの遺跡は、旧河道沿いの微高地に集落が形成されていましたが、洪水の影響で集落が廃絶したことがわかっています。中世から近世にかけては、耕地の拡大に伴い築堤が進みましたが、河床が上昇し洪水や水争いが頻発するようになりました。
1951年に野洲川ダムが建設され、その後、放水路や幹線水路網が整備されることで水害や水争いは解消されました。青土ダムの完成（1988年）や放水路の通水（1979年）によって、野洲川流域は安定した水環境が保たれるようになりました。
野洲川は、滋賀県の以下の自治体を流れています。
野洲川には以下のような支流があります（括弧内は流域の自治体）。