御上神社は、滋賀県野洲市三上に鎮座する歴史ある神社です。式内社(名神大社)で、旧社格は官幣中社、現在は神社本庁の別表神社に指定されています。三上山(みかみやま)、通称「近江富士」を神体山として祀り、その山麓に神社が立地しています。この三上山は、俵藤太(藤原秀郷)によるムカデ退治伝説でも知られています。
御上神社は滋賀県野洲市三上にあり、琵琶湖南岸に位置しています。周囲は自然に囲まれており、参拝者は豊かな風景を楽しむことができます。
御上神社の主祭神は天之御影命(あめのみかげのみこと)です。天津彦根命の子であり、天照大神の孫にあたる神様で、日本における忌火の神として知られています。忌火とは、清浄な儀式や祭祀に用いられる神聖な火を意味します。
三上山は御上神社の神体山とされ、古くから信仰の対象とされてきました。神体山とは、神が宿るとされる山で、自然そのものを神として崇拝する信仰の形です。三上山の周辺からは、多くの銅鐸が発見されており、古代からこの地で祭祀が行われていたことがわかっています。
御上神社の起源は社伝によると、孝霊天皇6年6月18日、天之御影命が三上山の山頂に降臨し、それを御上祝(神主)が三上山を神体山として祀ったことに始まると伝えられています。
養老2年(718年)には、藤原不比等が勅命により、三上山の山麓に社殿を造営しました。この地はかつて「榧木原」と呼ばれ、遥拝所がありました。
御上神社の本殿は国宝に指定されています。この建物は鎌倉時代後期に造営されたとされていますが、一部の改修は建武4年(1337年)頃に行われたと考えられています。本殿の構造は、神社・寺院・殿舎の様式が混ざり合った独特なもので、「御上造」とも呼ばれることがあります。
拝殿も鎌倉時代後期に建てられた重要文化財です。かつての本殿を移築・改造したものとされ、現在の本殿と似た構造を持っています。檜皮葺の屋根や入母屋造が特徴です。
楼門は室町時代に建てられたもので、重要文化財に指定されています。檜皮葺の入母屋造で、威厳ある佇まいを持つ門です。
御上神社では、年間を通して多くの祭事が行われています。毎月1日には月首祭、14日には月次祭が行われ、年の節目や農業に関連する行事が数多くあります。
10月14日に行われる秋季古例祭は、「ずいき祭り」とも呼ばれ、秋の収穫感謝と子孫繁栄を祈念する祭りです。この祭りでは、ずいきで作られた5基の神輿が奉納されるほか、子供たちによる相撲が行われます。中世の祭祀組織や神事が受け継がれているため、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
御上神社の摂社には、重要文化財に指定されている若宮神社があります。祭神は伊弉諾尊や菅原道真公で、鎌倉時代後期に建てられました。また、三宮神社は滋賀県指定の有形文化財で、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を祭神とし、室町時代に造営されたものです。
御上神社の末社には、天照大神を祀る大神宮社や、火の神である火産霊命を祀る愛宕神社などがあります。これらの末社も重要な祭祀の場として大切にされています。
御上神社の本殿は、1899年に特別保護建造物として指定され、その後1952年には国宝に指定されました。この本殿は鎌倉時代後期の造営であり、長い歴史を持っています。
拝殿、楼門、摂社若宮神社本殿は、それぞれ重要文化財に指定されています。また、平安時代の作とされる木造の狛犬も重要文化財に指定され、現在は京都国立博物館に寄託されています。
「三上のずいき祭」は、2005年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。伝統的な神事が行われるこの祭りは、地域の文化と歴史を伝える重要な行事となっています。
摂社三宮神社本殿は、室町時代に造営され、1960年に滋賀県指定有形文化財に指定されました。また、南北朝時代に作られた両界曼荼羅図も、県指定の有形文化財となっています。
御上神社は、その豊かな歴史と自然環境に囲まれた神聖な場所であり、多くの参拝者が訪れます。特に、秋の「ずいき祭り」や春の「例祭」には、多くの参拝客や観光客で賑わいます。三上山を背にした神社の風景は美しく、歴史ある建築物や文化財を楽しむことができるでしょう。
また、境内には様々な摂末社があり、それぞれの神々に祈りを捧げることができます。参拝する際は、神社の神聖な雰囲気を尊重し、静かに祈りを捧げることが推奨されます。