石塔寺は、滋賀県東近江市に位置する天台宗の寺院で、阿育王山という山号を持ちます。本尊は秘仏の聖観音で、「石塔寺」の名のとおり、境内には石造三重塔（伝・阿育王塔）を中心に、数万基の石塔や石仏が点在しています。
この寺は、毎年8月末に「石塔フェスティバル（石塔寺万燈祭）」が開催されることで知られています。この行事では、境内に並ぶ無数の石塔や石仏に献灯が行われ、荘厳な光景が広がります。石塔寺は、近江西国三十三箇所の第22番札所としても信仰を集めています。
石塔寺は、聖徳太子が創建したという伝承を持つ寺院です。伝承によれば、聖徳太子は近江に48か寺を建立し、石塔寺はその満願の寺であったとされています。当初は「本願成就寺」と呼ばれていました。この伝承が史実かどうかは明確ではありませんが、近江地方には、他にも聖徳太子が関わったとされる寺院が多数存在します。
石塔寺の中心には、伝・阿育王塔と呼ばれる三重の石塔がそびえています。平安時代の長保3年（1003年）、比叡山の僧・寂照法師が唐でこの塔の存在を知り、日本に知らせたとされています。この塔は、実際には奈良時代前期（7世紀）に渡来人によって建てられたとされ、特に百済系の文化が深く関与しています。
寂照法師からの手紙を受けた一条天皇は、近江国で阿育王塔を探索させ、その結果、武士の野谷光盛によって寺の裏山から阿育王塔が発見されました。この発見を喜んだ一条天皇は、七堂伽藍を再建し、寺名を「阿育王山石塔寺」と改称しました。この頃、石塔寺は勅願寺として大いに栄え、八十余坊を構える大伽藍を形成しました。
石塔寺の石造三重塔は、日本最古の石造層塔として知られています。奈良時代前期に建立されたこの塔は、高さ7.6メートルの大きさを誇り、その様式は朝鮮半島の石造物に類似しています。このことから、石塔寺の三重塔が渡来人、特に百済系の人々によって建てられたという説が有力です。
石塔寺には、他にも重要文化財として認定されている石造宝塔や石造五輪塔が存在します。これらは鎌倉時代に建立され、鎌倉時代からの信仰の厚さを物語っています。特に「石造宝塔」は、正安4年（1302年）の建立で、円筒形の塔身に宝形造の屋根を持つ美しい形式の塔です。
石塔寺は、安土桃山時代に織田信長による焼き討ちを受け、七堂伽藍や寺宝のすべてを焼失してしまいました。その後、江戸時代初期に天海の弟子である行賢によって一部が復興されましたが、かつての栄華を取り戻すことはありませんでした。
現在、石塔寺はその歴史的価値とともに、多くの参拝者や観光客を惹きつけています。毎年開催される石塔フェスティバルでは、訪れる人々が歴史の重みを感じながら、神秘的な雰囲気の中で石塔や石仏を拝むことができます。
JR東海道本線（琵琶湖線）および近江鉄道八日市線（万葉あかね線）の近江八幡駅から、近江鉄道バス（北畑口行き）で桜川駅停留所まで行き、そこから日野町営バス（原行き）に乗り継ぎ、石塔口停留所で下車します。そこから徒歩15分の距離です。
普通車20台、大型車10台分の駐車場が完備されています。
石塔寺は、5月から10月までは9時から18時、それ以外の期間は9時から17時まで開門しています。
大人は400円、小人は100円の拝観料が必要です。
石塔寺は、その歴史的な背景や文化財の多さから、訪れる価値のある場所です。仏教の信仰や渡来文化とのつながりを感じながら、平和で荘厳な雰囲気を楽しむことができます。また、毎年の石塔フェスティバルでは、石仏に灯が灯され、幻想的な光景が広がります。歴史と自然が融合するこの場所で、時を超えた静けさと安らぎを感じることができるでしょう。