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旧伊庭家住宅

(きゅう いばけ じゅうたく)

旧伊庭家住宅は、滋賀県近江八幡市安土町小中に位置する歴史的建造物です。この建物は、安土町文化財建造物第1号として指定されており、現在ではその歴史的価値と建築様式の魅力から多くの観光客に訪れられています。

建物の概要

旧伊庭家住宅は、大正2年(1913年)に、アメリカの建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories)の設計により建築されました。これは、旧住友財閥の二代目総理事であった伊庭貞剛(いばさだたけ)の四男、伊庭慎吉の邸宅として建てられました。伊庭慎吉は画家であり、神職を務め、また安土村の村長も歴任しました。このため、この住宅は「伊庭家住宅」や「伊庭邸」とも呼ばれています。

文化財としての保存

1978年、旧伊庭家住宅は老朽化のために取り壊しが検討されていましたが、ヴォーリズの初期作品としての文化的価値が再認識されました。これにより、1979年には安土町指定文化財として保存処置が施されることになりました。修繕は個人の寄付金によって行われ、現在も保存状態が良好です。

安土町郷土館としての活用

現在、旧伊庭家住宅は「安土町郷土館」として一般公開されており、訪れる人々にその歴史的価値と美しい建築を紹介しています。見学者は、和洋折衷のユニークなデザインや内部の保存状態を堪能することができます。

建築様式の特徴

旧伊庭家住宅の外観は、ヴォーリズの独特な設計が反映された和洋折衷の建築様式です。主に洋風の要素が目立つものの、1階は和風を基調とし、2階は洋風を取り入れた造りになっています。この巧みな融合は、日本と西洋の建築文化が交差した当時の時代背景を象徴しています。

外観の特徴

建物の上部には、洋風のハーフティンバーや煙突が見られ、外部からもその洋風色が強く感じられます。しかし、1階部分は和風を基調としたデザインが施され、内部にも和の美しさが表現されています。特に、木造建築の美しさと、巧みな装飾が目を引くポイントです。

内部の特徴

内部も、1階は和風の設えが特徴的で、伝統的な日本家屋の要素を随所に感じることができます。一方で、2階は洋風建築の要素が取り入れられ、当時のモダンな暮らしが垣間見えます。このように、和洋の融合が巧みに施された旧伊庭家住宅は、訪れる人々に両方の文化を感じさせます。

建築概要

ウィリアム・メレル・ヴォーリズについて

旧伊庭家住宅を設計したウィリアム・メレル・ヴォーリズは、アメリカ合衆国出身の建築家であり、日本で数多くの西洋建築を手がけたことで知られています。ヴォーリズは、1905年(明治38年)に英語教師として日本に来日し、滋賀県内でプロテスタントの伝道活動を開始しました。その後、建築家としても活躍し、多くの建築物を残しました。彼の建築は、コロニアル・スタイルやスパニッシュ・スタイルなど、当時のアメリカの建築様式を反映しつつ、日本の風土にも調和するデザインが特徴です。

ヴォーリズの社会活動

ヴォーリズは建築家としての活動だけでなく、社会事業家としても知られています。彼は、自らの設計事務所を経営しながら、病院や学校の設立など、社会に貢献する活動を展開しました。また、メンソレータム(現在はロート製薬の商標)を広く日本に普及させたことでも知られています。

周辺の観光スポット

旧伊庭家住宅を訪れる際、周辺には他にも魅力的な観光スポットが点在しています。特に、伊庭慎吉が神職を務めた「沙沙貴神社(ささきじんじゃ)」は歴史的な神社であり、その荘厳な雰囲気が観光客を魅了します。また、近江八幡市全体が歴史的な街並みを残しており、散策しながら過去の日本に思いを馳せることができます。

アクセス情報

旧伊庭家住宅へのアクセスは非常に便利で、JR東海道本線(琵琶湖線)「安土駅」から徒歩約10分で到着します。公共交通機関を利用しての訪問がしやすく、観光の一環として立ち寄るのに最適な場所です。

まとめ

旧伊庭家住宅は、滋賀県近江八幡市の歴史と文化を今に伝える貴重な建築物です。ヴォーリズによる和洋折衷の建築様式は、日本の伝統と西洋のモダンなデザインが見事に融合しており、建築ファンや歴史愛好家にとって必見の場所です。また、郷土館として一般公開されており、誰でもその魅力を体感することができます。近江八幡を訪れる際には、ぜひ旧伊庭家住宅に立ち寄り、その歴史と美を楽しんでください。

Information

名称
旧伊庭家住宅
(きゅう いばけ じゅうたく)

彦根・近江八幡

滋賀県