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水観寺

(すいかんじ)

滋賀県大津市園城寺町に位置する水観寺は、天台寺門宗に属する寺院であり、総本山園城寺の別所としてその存在を知られています。山号は長等山、本尊には薬師瑠璃光如来が祀られており、古くから多くの信仰を集めてきました。

創建とその歴史

水観寺の創設:1040年に遡る悠久の歴史

水観寺の歴史は、長久元年(1040年)に始まります。この年、かつて存在していた園城寺大門(現在の園城寺町交差点の西側、石垣のみが残る)の北東一帯に、明尊大僧正によって創建されました。明尊大僧正は、小野道風の孫であり、本朝唯一の八宗総博士という高名な人物です。

創建時には本堂、法華堂、三重塔などの大伽藍が建立され、東西に総門を備えた壮麗な寺院でした。その後、園城寺中院の別所寺院としての役割を担うことになりました。

十一面観音像の流失と豊臣秀吉の影響

水観寺は、創建当初は十一面観音を本尊として祀っていました。しかし、文禄4年(1595年)、豊臣秀吉の怒りを買った園城寺が寺領を没収され、廃寺となると、十一面観音像も行方不明となってしまいました。寺院としての活動も衰退し、かつての栄華を失うこととなりました。

復興と新たな本尊の迎え入れ

豊臣秀吉が没した後、園城寺は再興され、これに伴い水観寺も復興の道を歩みます。慶長6年(1601年)、園城寺長吏准三宮道澄大僧正によって再建が行われ、この際、薬師堂に安置されていた薬師瑠璃光如来像が新たな本尊として迎えられることになりました。この薬師瑠璃光如来は、病気平癒や健康を祈願する多くの人々に信仰されてきました。

本堂の再建と移転

現在の水観寺本堂は、明暦元年(1655年)に再建されたものです。長い年月を経たこの本堂は、1984年(昭和59年)に滋賀県指定有形文化財に指定され、1988年(昭和63年)には解体修理が行われ、現在の位置に移転されました。この移転により、寺院はより整備された形で現代にその姿を残すことができました。

境内の見どころ

本堂:歴史を伝える重要文化財

水観寺の本堂は、明暦元年(1655年)に再建され、その後、1988年に現在の場所へ移設されました。この本堂は、江戸時代の建築様式を今に伝える貴重な建築物であり、滋賀県指定有形文化財として保護されています。本堂内には、薬師三尊像が安置されており、さらにその周囲には十二神将も配置され、厳かな雰囲気を醸し出しています。

弁天堂と庫裏

本堂に隣接して弁天堂が建てられており、こちらも1988年に現在地へと移転されています。また、寺院を支える重要な建物である庫裏も境内にあり、寺院の日常生活が営まれています。

文化財

水観寺には、滋賀県指定有形文化財として本堂のほかに、もう一つ重要な文化財があります。それが鰐口です。この鰐口は琵琶湖文化館に寄託されており、歴史的価値の高い品として保存されています。

西国薬師四十九霊場

水観寺は、西国薬師四十九霊場の48番札所としても知られています。この霊場巡りは、病気平癒や健康祈願を目的とした巡礼で、多くの参拝者が足を運びます。水観寺を訪れることで、霊場巡りの一環としての修行や祈りを行うことができるでしょう。

周辺の札所とのつながり

水観寺は、前後の札所として善水寺(47番札所)延暦寺(49番札所)が位置しています。これらの寺院は、それぞれ独自の歴史や文化を持ち、霊場巡りの中で訪れる際には、水観寺とのつながりを感じながら参拝することができるでしょう。

交通アクセス

水観寺へのアクセスは、公共交通機関を利用するのが便利です。京阪電鉄石山坂本線を利用し、三井寺駅から徒歩12分、大津市役所前駅から徒歩14分の距離に位置しています。園城寺周辺の観光と併せて訪れることができるため、参拝者にとっても立ち寄りやすい場所にあります。

まとめ

滋賀県大津市にある水観寺は、長い歴史を持ち、多くの文化財を有する寺院です。1040年に創建され、幾度もの再建や移転を経ながらも、現在まで信仰を集め続けています。薬師瑠璃光如来を本尊とするこの寺院は、病気平癒や健康を祈願する場として、多くの参拝者に崇敬されています。

境内には、滋賀県指定有形文化財である本堂をはじめ、弁天堂や庫裏などがあり、訪れる人々に静寂と歴史の重みを感じさせる空間を提供しています。また、西国薬師四十九霊場の札所として、多くの巡礼者が足を運ぶ霊場でもあります。

園城寺やその周辺の観光地と併せて、水観寺を訪れることで、歴史的な文化財や霊場巡りの一環としての体験を楽しむことができるでしょう。ぜひこの機会に、水観寺の歴史と文化に触れてみてください。

Information

名称
水観寺
(すいかんじ)

大津・比叡山

滋賀県