安養寺は、滋賀県大津市にある浄土宗の寺院で、山号は立木山(たちきさん)です。本尊は聖観世音菩薩で、「立木観音」として親しまれ、特に「立木さん」という愛称で地域の人々に広く信仰されています。弘法大師が42歳の厄年に開いたとされ、厄除けの寺としても有名です。新西国三十三箇所第20番札所に指定されており、琵琶湖国定公園のエリア内に位置しています。
安養寺の創建は、弘仁6年(815年)に遡ります。寺伝によれば、この年、諸国を巡っていた弘法大師が瀬田川の対岸に光り輝く霊木を見つけました。しかし、川の流れが速く渡れない中、突然白鹿が現れ、大師を背に乗せて対岸まで渡らせてくれたと伝えられています。その白鹿は観世音菩薩の化身であり、大師は感動し、その霊木に観世音菩薩像を彫刻し、寺を建立しました。
この出来事が弘法大師の厄年であったため、以降、安養寺は厄除けの寺として広く信仰を集めることとなりました。創建当初は真言密教系の寺院であったと考えられていますが、現在は浄土宗に属しています。
安養寺の本尊である立木観音像は、五尺三寸(約160cm)あり、これは弘法大師が自分の背丈に合わせて彫刻したと伝えられています。この観音像は厄除けに霊験があるとされ、多くの参拝者が訪れます。
安養寺の境内は瀬田川河畔から約800段の急な石段を登ったところにあります。この石段は参拝者にとっては一種の修行であり、石段を登り切ると本堂にたどり着きます。本堂には立木観音像が安置され、参拝者は正面と裏側の両方から参拝するのが正式な作法です。
本堂からさらに石段を登ると、鐘楼があります。ここには「厄除の鐘」と呼ばれる梵鐘があり、参拝者は鐘をついて厄を払います。そのさらに上には祠ほどの大きさの奥の院があり、道了権現大菩薩が祀られています。ここでも、本堂同様、正面と裏側からの参拝が推奨されています。
立木山には、弘法大師と白鹿の伝説が語り継がれています。弘法大師が42歳の厄年に、この山に訪れた際、白鹿に導かれて霊木にたどり着き、観世音菩薩像を彫刻したことから、立木観音としての信仰が始まりました。地元では、この白鹿の跳躍に由来して、瀬田川の一部を「鹿跳(ししとび)」と呼んでいます。
本堂では、まず正面から立木観音を拝み、その後裏側からも参拝するのが正式な流れです。本堂の裏側には礼拝所が設けられており、正面と裏側の両方から祈願することで、より深いご加護を得られるとされています。
鐘楼にある梵鐘は「厄除の鐘」と呼ばれています。参拝者は一人一撞きし、心を込めて厄を払うことで、厄除けのご利益を得ることができます。
奥の院までの石段を登ると、そこには道了権現大菩薩が祀られています。奥の院も、本堂同様、表側と裏側の両方から参拝するのが正式です。特に厄年の参拝者にとっては、奥の院まで足を運ぶことで、より強いご加護を得られるとされています。
毎月17日は安養寺の縁日となっており、参拝者で賑わいます。この日には、多くの人々が厄除けを祈願し、立木観音のご加護を求めて訪れます。また、縁日には御茶所での茶の接待も行われており、参拝後に一息つくことができます。
安養寺は琵琶湖国定公園のエリア内に位置しており、周辺には豊かな自然が広がっています。瀬田川沿いの美しい景色や、琵琶湖周辺の観光も楽しむことができ、参拝と併せてリフレッシュするのに最適な場所です。
JR石山駅から京阪バスで約25分、「立木観音前」停留所で下車します。そこから本堂まで続く800段あまりの急な石段を15~30分かけて登ります。体力に自信がある方には、このコースがおすすめです。
旧参道を使う場合、JR石山駅から京阪バスで約15分、「南郷温泉」停留所で下車します。このコースは50分ほど山道を登りますが、石段コースほど急ではなく、距離は長いものの比較的ゆったりとした登りになります。
安養寺には普通車50台、大型車10台が駐車できる駐車場があります。また、1月の厄除け参りの時期には、瀬田川の鹿跳橋を渡った所に、普通車500台が収容可能な臨時駐車場が開設されます。
安養寺の境内受付は、午前9時から午後4時30分まで行われています。参拝を予定されている方は、この時間内に訪れるようにしてください。
立木山は弘法大師が創建した霊験あらたかな場所として、長年にわたり信仰を集めてきました。特に厄除けの霊験で知られ、多くの人々が厄年の参拝に訪れています。厄除けを祈願する際には、本堂や奥の院での正式な参拝が大切です。
安養寺は、弘法大師が厄年の時に創建したとされる歴史ある寺院で、立木観音の霊験あらたかな厄除けの寺として広く知られています。厳しい石段を登り、本堂や奥の院での参拝を通じて心を清め、厄を払う体験は多くの参拝者にとって特別なものです。琵琶湖の自然豊かな環境に包まれた安養寺は、心身をリフレッシュさせる場所でもあり、観光と信仰の両方を楽しむことができます。