雄琴温泉は、滋賀県大津市の苗鹿(のうか)・雄琴に位置する温泉地です。最澄によって開かれたと伝えられ、約1200年の歴史を誇る由緒ある温泉として知られています。滋賀県内最大の温泉地であり、2000年以降は地元観光協会などで平仮名表記の「おごと温泉」が使用されています。
雄琴温泉は、近年の各旅館経営者の努力によって大きく変化を遂げ、宿泊客が増加している温泉地です。2006年10月27日には「地域ブランド」として認定されました(地域団体商標:第5034857号)。
雄琴温泉の泉質はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性温泉)で、温泉成分にはカリウム、ナトリウム、カルシウム、メタケイ酸、硫酸イオンなどが含まれています。源泉の温度は30.1℃から35.9℃で、温泉成分は疲労回復や神経痛、関節痛、冷え性などに効果があります。
雄琴温泉街には、1929年創業の老舗「湯元舘」など、旅館やホテルが約10軒点在しています。比叡山の山麓に位置し、琵琶湖の美しい景色を楽しむことができます。また、周辺には比叡山延暦寺や日吉大社、石山寺など、歴史的な名所が多く、観光の拠点としても最適です。名物料理として、鴨鍋や近江牛料理が楽しめます。
雄琴温泉の開湯は、約1200年前に最澄によってなされたと言われていますが、地域には次のような伝承があります。かつて、この地域には8つの頭を持つ大蛇が住んでおり、その大蛇の棲む谷には「念仏池」(蛇池)と呼ばれる池がありました。村人はこの池に念仏を唱えながら賽銭を投げ入れると、病気が治ると信じられていました。この池が雄琴温泉の由来とされ、法光寺境内にその跡が残されています。
雄琴という地名は、平安時代の貴族である今雄宿禰の荘園に由来しています。その邸宅から琴の音がよく聞こえたことから、「雄」の字を取り、「琴」と合わせて「雄琴」と呼ばれるようになったと言われています。
1889年、苗鹿村、雄琴村、千野村が合併し、町村制が施行されたことにより雄琴村が発足しました。温泉開発が本格化したのは大正時代以降で、霊泉がラジウム鉱泉であることが判明したことから温泉地としての発展が加速しました。鉄道の開通とともに温泉旅館が次々に建てられ、戦後には進駐軍に接収されていた時期もありましたが、その後は再び温泉地としての人気を取り戻しました。
1970年代、温泉街の南側にトルコ風呂(現在のソープランド)が進出し、雄琴温泉は歓楽温泉としての側面が強くなりました。1971年には初のソープランド「花影」が開業し、大規模な風俗街が形成されました。これにより、温泉地としてのイメージが「雄琴=ソープランド」となり、観光ガイドブックからも名前が外されるなど、評価が低下しました。
バブル崩壊後、職場団体客の減少に伴い温泉街は低迷し、28軒あった旅館が10軒にまで減少しました。しかし、旅館組合が立ち上げた『雄琴青経塾』によってイメージ改善に取り組み、露天風呂付きの客室の新設やサービスの向上、食のこだわりを強調したキャンペーンが功を奏し、再び観光地としての魅力を取り戻しました。
雄琴温泉周辺には、比叡山延暦寺や日吉大社、石山寺などの名所があり、歴史と自然を楽しむことができます。また、琵琶湖を望む眺望は観光客に人気で、特に鴨料理や近江牛料理が名物です。
JR西日本の湖西線「おごと温泉駅」が最寄り駅で、各旅館・ホテルから送迎バスやタクシーが利用可能です。
江若交通のバスが「おごと温泉」停留所まで運行しており、公共交通機関でのアクセスも便利です。
琵琶湖汽船が運行する「おごと温泉港」からもアクセスでき、湖上からの風景も楽しむことができます。
雄琴温泉は長い歴史を持ちながら、近年は旅館経営者たちの努力により、再び観光地として注目を浴びるようになっています。温泉地としての魅力はもちろん、周辺の観光スポットや美しい自然環境も楽しむことができ、歴史と風情を感じる滞在を提供してくれます。ぜひ一度、訪れてその魅力を体感してみてください。