滋賀県の景勝地、近江舞子は、琵琶湖岸に位置し、風光明媚な景観で知られています。この地は「雄松崎(おまつざき)」とも呼ばれ、白砂青松が続く美しい海岸線が特徴です。
近江舞子は、北は大津市北小松から、南は大津市南比良まで広がる地域です。琵琶湖に沿って約3キロメートルにわたる白砂青松の景観が広がり、背後には比良山地があります。比良川河口の北側には弦月状の砂州が広がり、その内側には内湖があります。こうした白砂青松の風景は、比良山地から運ばれる花崗岩の風化によって形成されたものです。
この地域は琵琶湖八景にも選ばれ、「涼風・雄松崎の白汀」として紹介されています。兵庫県神戸市垂水区にある舞子に由来して「近江舞子」と名付けられました。
2024年(令和6年)時点では、近江舞子の砂浜は台風や浸食の影響で変化が見られ、特に「浜崖」と呼ばれる段差が発生しています。最大で約1メートルの段差が2024年春にも確認されており、滋賀県では2026年(令和8年)から突堤の整備や砂の補充などの工事が計画されています。
湖西の琵琶湖岸では湖底がすり鉢状に深浅が急激に変化し、遊泳可能範囲内でも水深が2〜3メートルに達することがあります。過去に近江舞子でも水難事故が発生しており、遊泳時には注意が必要です。
夏場には、ウィンドサーフィンや水泳などを楽しめるスポットとして多くの観光客が訪れ、琵琶湖有数のリゾート地となっています。観光客はハス網漁の観覧を目的として明治時代から訪れ始め、昭和初期には江若鉄道や太湖汽船の宣伝によって水泳場としての知名度も高まりました。
近年では、アジアや欧米からも観光客が訪れるようになり、2018年(平成30年)のシーズン中には約3割が外国人観光客で占められていました。新型コロナウイルス禍では感染対策が講じられ、2021年(令和3年)には駐車場の縮小や密集を避けるためのチラシ配布などが行われました。
近江舞子はかつてアメリカ占領軍専用の保養地としても利用されていました。占領解除後も開発計画がいくつも立てられましたが、利害関係の対立で進展しなかった時期もありました。
2021年(令和3年)には、京阪電鉄不動産とエバーグレイズが共同で開発したグランピング施設「エバーグレイズ琵琶湖」が営業を開始しました。しかし、近江舞子周辺には廃業となった宿泊施設も少なくなく、かつてあった近江舞子ホテルや国民宿舎「近江舞子ロッジ」などがその例です。
夏季には水泳場が開かれ、バーベキューや釣り、キャンプなどのアクティビティが楽しめます。水泳場では遊泳区域が設定されており、水上バイクなどとの接触事故を防ぐための安全対策が行われています。
水泳場には更衣室、ロッカー、トイレ、交番が設置され、警察官やスタッフが常駐しています。特に観光客の増加に伴い、水難事故や非行問題が懸念されたため、警察の防犯体制が強化されています。
近江舞子水泳場は地元観光協会によって管理されており、毎年夏の開場前には地域住民総出で大掃除が行われます。また、キャンプファイヤーなどによる白砂の汚染が問題視されており、キャンプ場の入場制限も実施されています。
滋賀県では毎年水泳場の水質調査を実施しており、2023年と2024年には「AA」および「A」判定が下されました。
毎年3月26日には、湖国に春の訪れを告げる恒例行事「比良八講」が行われます。これは水難者の供養と春の到来を祈願する行事であり、天台宗の僧侶が琵琶湖に水を注いで祈祷を行います。
近江舞子へのアクセスは、湖西線近江舞子駅を下車し徒歩5分ほどです。国道161号の志賀バイパス近江舞子ランプからも琵琶湖方面にアクセスでき、駐車場は有料で600台が収容可能です。
かつては江若鉄道が近江舞子駅と近江舞子南口駅を設置していました。1926年に「雄松駅」として開業した後、近江舞子駅に改称されました。また、1953年には湖水浴客のために臨時駅として近江舞子南口駅が開業しましたが、現在は存在しません。