琵琶湖汽船株式会社は、滋賀県大津市に本社を構え、日本最大の湖である琵琶湖において遊覧船事業を行っている企業です。京阪グループの一員として、その事業は遊覧船の運航のみならず、さまざまな関連事業にも展開しています。
琵琶湖汽船は、日本最大の湖である琵琶湖で遊覧船を運航することを主な業務としています。さらに、滋賀県立びわ湖フローティングスクール「うみのこ」の運航受託、飲食業、そして近江大橋の有料道路料金徴収業務など、多岐にわたる業務を展開していました。
琵琶湖における水運の歴史は、江戸時代以前から和船によって行われていましたが、1869年（明治2年）に琵琶湖で初めての汽船「一番丸」が就航したことにより、湖上交通に大きな変革がもたらされました。この汽船の導入により、従来の和船運航者や宿泊業者との競争が激化しましたが、政府の許可を得た新たな汽船が次々と登場し、琵琶湖の水運はさらに活発化していきました。
1882年（明治15年）、琵琶湖における競争の激化により、複数の運航会社が合同して「太湖汽船（初代）」が設立されました。これにより、琵琶湖の長距離航路の統一が図られ、鉄道との連携も進められました。一方で、湖南地域では「湖南汽船」が設立され、ローカルな航路が発展しました。
湖南地域では、多くの小規模な事業者が存在していました。1872年（明治5年）、大津の米屋であった谷口嘉助が中心となり「紺屋関会社」を設立し、山田港と紺屋関港を結ぶ航路を開設しました。この航路は当初和船によって運航されていましたが、後に汽船が導入され、運航サービスが向上しました。1886年（明治19年）には、山田汽船と紺屋関汽船が合併して「湖南汽船」が設立され、競争力がさらに強化されました。
鉄道の発展に伴い、琵琶湖の水運は一般交通手段としての役割を徐々に失い、観光事業への転換が進みました。1894年（明治27年）、大津町からの補助を受け、大津と石山・坂本を結ぶ遊覧船の運航を開始しました。その後、1903年（明治36年）の大阪博覧会に合わせて「近江八景めぐり」が企画され、遊覧船事業が本格的に展開されるようになりました。
1911年（明治44年）、京阪電気鉄道との船車連帯輸送が開始され、琵琶湖汽船は鉄道との連携によって観光事業をさらに拡大しました。1920年（大正9年）には京阪が湖南汽船に出資し、後に同社は京阪の子会社となりました。この提携により、観光航路のさらなる充実が図られ、琵琶湖汽船の観光事業は一層発展しました。
1925年（大正14年）、琵琶湖汽船は自らが設置した南郷遊園地を開園し、観光事業者としての地位を確立しました。この遊園地開園の翌年にはモーターボートによる新造船も就航し、観光需要の増加に対応しました。これにより、琵琶湖汽船の観光客数は飛躍的に増加し、観光事業者としての評価が高まっていきました。
琵琶湖の水運事業は、競争と統合を繰り返しながら発展してきました。1929年（昭和4年）、京阪電気鉄道が太湖汽船（初代）を吸収合併し、船舶部門は湖南汽船に統合されました。これにより、琵琶湖の湖上交通は一元化され、現在の琵琶湖汽船の基礎が築かれました。
1951年（昭和26年）、太湖汽船は現在の社名である「琵琶湖汽船」に改称しました。それ以降、鉄道やバスの発展により湖上交通の重要性は薄れていきましたが、琵琶湖汽船は遊覧船事業を中心に、観光船の運航を続けています。特に「ミシガン」や「ビアンカ」といった大型遊覧船は、琵琶湖の象徴的存在となり、多くの観光客を魅了しています。
現在、琵琶湖汽船は複数の遊覧船を運航しており、琵琶湖の美しい景色を楽しむことができる観光プログラムを提供しています。代表的な遊覧船には、アメリカ南部の外輪船を模した「ミシガン」と、琵琶湖最大の豪華遊覧船「ビアンカ」があります。これらの船は、琵琶湖を巡りながら歴史や自然を堪能できる人気の観光アトラクションとなっています。
「ミシガン」は、アメリカ南部のミシシッピ川を航行していた外輪船をモデルにした観光船です。この船は琵琶湖のシンボル的存在であり、遊覧中にはジャズの演奏や食事を楽しむことができます。湖上から眺める琵琶湖の景色は格別で、日中のクルーズやサンセットクルーズ、ナイトクルーズなど、さまざまな時間帯で異なる風景を楽しむことができます。
「ビアンカ」は琵琶湖で最大級の豪華遊覧船で、結婚式やパーティー、各種イベントなどにも利用されています。3階建ての船内には広々としたデッキやラウンジがあり、快適なクルーズを楽しむことができます。また、貸切クルーズも可能で、特別な日の演出に最適です。
琵琶湖汽船は、長い歴史の中で幾度もの変遷を経ながら、現在も観光業界において重要な役割を果たしています。今後も地域密着型の観光事業者として、琵琶湖の魅力を国内外に発信し続けることでしょう。また、環境保護や地域との共生を重視し、持続可能な観光業の発展に寄与していくことが期待されます。