円満院(旧字体:圓滿院)は、滋賀県大津市園城寺町に位置する天台宗系の単立寺院です。山号は「長等山」、本尊は不動明王を祀っており、かつては天台宗寺門派(三門跡の一つ)として名を知られていました。現在でも、近畿三十六不動尊第25番札所として参拝者が訪れます。
円満院の起源は、平安時代にまで遡ります。寛和3年(987年)、村上天皇の皇子・悟円法親王により京都の岡崎に「平等院」として創建されたと伝えられています。その後、長久元年(1040年)には、園城寺の明尊大僧正が後朱雀天皇の支援を受けて新しい寺院を創建し、「圓滿院」と命名しました。歴代皇族が住職を務める門跡寺院として栄え、天台宗寺門派(三門跡の一つ)の重要な拠点となりました。
江戸時代初期、現在の地に移転され、正保4年(1647年)には寝殿が明正天皇より下賜されました。以降も、円満院は歴史的な存在感を保ち続けました。1947年には、天台寺門宗から独立し、現在の単立寺院として運営されています。
円満院の本堂は、歴代天皇のお位牌を祀り、天皇へのご供養を行う場所です。訪れる者にとって、歴史の重みを感じる場所として重要な役割を果たしています。
庫裏は、寺院の管理や住職の居住スペースとなっている施設で、円満院の運営を支える中心的な役割を担っています。
「三蜜殿」は、宿泊施設として提供されており、京都からも近い立地のため、観光拠点として利用されることが多いです。また、静かな環境を生かして、合宿や研修の場としても利用されています。宿坊に滞在することで、円満院の落ち着いた雰囲気の中で心身をリフレッシュすることができます。
大津絵美術館では、江戸時代に東海道の大津宿で街道を行き交う人々に売られていた「大津絵」が展示されています。大津絵は、縁起物として広く親しまれており、その独特な絵柄が多くの旅人に好まれていました。美術館内では、初期から近世に至るまでの貴重な大津絵を鑑賞することができます。
円満院の宸殿は、1619年(元和5年)に徳川幕府第2代将軍徳川秀忠と御台所江姫の五女・和子(東福門院)が後水尾天皇に入内した際に、禁裏に造営された建物と伝えられています。1647年(正保4年)に明正天皇によって円満院に下賜され、その後、1902年(明治35年)には国の重要文化財に指定されました。宸殿の南北2列に配置された6室の間取りが特徴で、一の間には後水尾天皇が座したと伝えられる玉座が置かれています。
各室には狩野派による障壁画が描かれていましたが、現在見られるものは複製です。原本の障壁画は京都国立博物館に収蔵されており、その美しい芸術を今に伝えています。
勅使門は、かつて天皇陛下や勅使が訪れる際のみ開かれた門です。格式の高い門として、円満院の歴史と威厳を象徴しています。門番所の内部は、現在そば屋として利用されており、訪れる人々が気軽に立ち寄れる場所になっています。
円満院の庭園「三井の名庭」は、室町時代の造園家・相阿弥による池泉観賞式庭園で、国の名勝及び史跡に指定されています。庭園は、鶴亀の蓬莱庭(ほうらいてい)として不老長寿と慶祝を表すデザインが施されています。庭の中央には細長い池があり、白砂が敷かれた空間と自然を活かした築山が特徴です。春には山桜が咲き、夏には天然記念物のモリアオガエルなど、四季折々の風景が楽しめます。
不動堂「三心殿」は、護摩堂として毎月第2日曜日と28日に不動護摩が行われます。円満院に伝わる秘仏・金色不動明王のお力で運を開き、願いを叶えるとされる護摩供が厳修され、近畿36不動尊第25番霊場として多くの参拝者が訪れます。
円満院の鐘楼は、現代アートのような独特のデザインで、伝統的な寺院の鐘楼とは一線を画す現代的な美しさを感じさせます。訪れる人々は、この鐘楼を見て円満院の新旧が融合した魅力を感じることでしょう。
勅使門は、かつて天皇や勅使が訪れた際にのみ開かれる格式高い門で、円満院の歴史的な背景を物語っています。現在は一般公開されており、内部のそば屋で食事を楽しむこともできます。
円満院の湧き水「三井の名水」は、天智天皇、天武天皇、持統天皇が産湯として使用したと伝えられており、長寿を願う縁起の良い水とされています。この湧き水は訪れる人々に無料で提供されており、持参した容器で自由に持ち帰ることができます。健康と開運を祈り、円満院を訪れる際にはぜひ試してみてください。
円満院の宿坊「三蜜殿」は、観光や研修など幅広い利用が可能な宿泊施設です。歴史と自然が調和した場所で、静かな時間を過ごすことができる宿坊は、現代の忙しい日常から離れ、心を癒す場所として人気があります。
円満院の「遊々亭」は、宿坊の宿泊者や一般の観光客が利用できる食事処です。餅つき会場としても利用されることがあり、訪れる人々に楽しみを提供しています。現在は臨時休業中ですが、再開の際にはぜひ立ち寄ってみてください。
「開運そば」は、円満院の名水「三井の名水」を使った美味しいダシで作られたそばです。ランチや軽食として楽しめるこのそばは、訪れる人々に人気があります。お腹が空いた時には、ぜひ「開運そば」で運気を高めてみてはいかがでしょうか。
円満院の受付には売店が併設されており、大津絵のポストカードやその他の記念品が販売されています。また、2階には「三井寺ホール」、3階には納骨仏壇があり、円満院を訪れる人々にさまざまなサービスが提供されています。
円満院には、国の重要文化財に指定されている宸殿をはじめ、多くの文化財があります。宸殿の附属建造物である「玄関」や「獅子口」も重要文化財に指定されています。
円満院の庭園である三井の名庭は、国指定の名勝及び史跡に指定されています。この庭園は、室町時代の造園家・相阿弥によるとされ、池泉観賞式の庭園として知られています。中央に池があり、池の背後には自然の地形を生かした築山が配されています。池の中には鶴島や亀島が浮かび、高く巨大な石橋が架けられており、「鶴亀の蓬莱庭」として不老長寿や慶祝を表す庭となっています。
三心殿は、護摩堂として毎月第2日曜日と28日に護摩供が行われています。この護摩供は、秘仏金色不動明王の力を借りて運を開き、願いを叶えるためのもので、近畿36不動尊霊場の一つとして多くの参拝者が訪れます。不動明王の強いご加護を受けることで、心の平穏と開運を祈る貴重な機会です。
遊々亭は、食事処として利用される場所で、宿坊での宿泊者や一般の方が食事を楽しむことができます。のんびりとした雰囲気の中で、特別なひとときを過ごすことができ、餅つき会などのイベントも行われています。※現在は臨時休業中ですので、訪れる際には事前にご確認ください。
円満院は、歴史と文化が豊かに息づく寺院であり、観光や宿泊、宗教的な体験を楽しむことができる場所です。重要文化財である宸殿や、名勝として名高い三井の名庭、大津絵美術館など、見どころがたくさんあります。特に、湧き水「三井の名水」は長寿祈願のために多くの人々が訪れる人気スポットです。また、護摩供や開運そばなどの体験を通じて、心身ともに癒されるひとときを過ごせるでしょう。
ぜひ、歴史と自然が調和したこの素晴らしい場所を訪れ、その魅力を体感してみてください。