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還来神社

(もどろぎ じんじゃ)

還来神社は、滋賀県大津市伊香立途中町にある歴史的な神社です。この神社は、古くから地域住民に信仰されており、特に武運長久や旅行安全のご利益があるとされています。社名「還来(もどろぎ)」は、藤原百川の娘である旅子が再び故郷に戻ってきたことに由来しています。

歴史的背景

この地はかつて藤原氏の食邑地であり、藤原百川の娘・旅子がここで生まれました。彼女は、成長後に比良山南麓にある最勝寺の開祖である静安に随仕し、仏教に帰依しました。地域では「蓮華夫人」として知られていました。

旅子と桓武天皇の関係

静安が度々宮中で仏教行事を行う際に、旅子もそれに従いました。彼女の才色兼備は桓武天皇の目に留まり、淳和天皇を出産しました。しかし、他の女官たちの嫉妬から、旅子は京都西院に隠退し、延暦7年に病で亡くなりました。その際、彼女は「故郷の梛の大木の下に葬られたい」と遺言を残し、現在の還来神社の地に葬られ、神として祀られることになりました。

源氏との関わり

源義朝と源頼朝の祈願

平治の乱(1159年)で敗北した源義朝一行は、八瀬大原街道を逃げ、還来神社にたどり着きます。ここで義朝は白羽の鏑矢を奉納し、武運長久を祈願しました。また、彼の息子である源頼朝も道中迷いながらもこの神社に辿り着き、源氏の再興を祈りました。後に頼朝は東国に逃れ、後に鎌倉幕府を開くことになります。

頼朝はこの神社に深い感謝を示し、神田を寄進しました。このことから、還来神社は武運長久や旅行安全の神として、多くの人々に崇敬されるようになりました。

出征者と還来神社

日清戦争や日露戦争、そして太平洋戦争の時代に至るまで、還来神社は無事帰還を祈願するために多くの人々が参拝しました。特に、頼朝が奉納した白羽の鏑矢にちなみ、参拝者は馬に付けられた鈴や大小の鈴を奉納する風習がありました。

祭神と神徳

藤原旅子の霊

還来神社の御祭神は藤原旅子の霊です。彼女は第五十代桓武天皇の皇妃であり、第五十三代淳和天皇の生母でもあります。旅子は藤原百川の娘で、この地で生まれました。還来神社は、彼女の霊を祀り、特に旅行安全や家内安全のご利益があるとされています。

神紋

神社の神紋は「下り藤」です。この紋は、神社の由緒や神徳を象徴しています。

境内施設

本殿と拝殿

還来神社の本殿は一間社流造で、間口は一間三尺、奥行は一間一尺です。また、拝殿は入母屋造で、間口は二間一尺、奥行は二間一尺です。その他にも神饌所、絵馬堂、参集殿、手水舎、仮屋、社務所などの施設が整っています。

境内社

還来神社の境内には、以下の摂社・末社が祀られています。

交通アクセス

還来神社へのアクセスは、JR堅田駅から江若バスの細川行きに乗り、「還来神社前」で下車するとすぐに到着します。公共交通機関を利用して訪れることができるため、比較的アクセスしやすい神社です。

年間行事

例祭

還来神社では毎年5月6日に例祭が行われます。この祭りは地域の重要な行事であり、多くの参拝者が訪れます。

神木と梛の木

神社の境内には、旅子の遺言により葬られた梛の木が今も残っており、古くから「神木」として崇められています。この梛の木は、還来神社の象徴であり、訪れる人々に神聖な雰囲気を感じさせます。

まとめ

還来神社は、その歴史的背景や源氏との深い関わりから、多くの人々に信仰されてきました。旅行安全や武運長久のご利益があるとされ、歴史を感じさせる静かな神社です。古木や神木に囲まれた境内で、かつての時代に思いを馳せながら参拝してみるのはいかがでしょうか。

Information

名称
還来神社
(もどろぎ じんじゃ)

大津・比叡山

滋賀県