長寿院は、滋賀県彦根市にある真言宗醍醐派の寺院です。山号は大洞山で、本尊は阿弥陀如来とされています。また、この寺院は日本三大弁財天の一つとされる「大洞弁財天」を祀っており、地元や観光客に親しまれています。
長寿院の歴史は、元禄8年（1695年）にさかのぼります。当時の彦根藩主であった井伊直興が、領内の安泰を願い、彦根藩領内の古城の主237人の霊を慰霊するために建立しました。寺院の立地は、彦根城の鬼門にあたる場所に位置しており、この選定は藩主の祈願が込められています。
井伊直興は、彦根城内にある楽々園・玄宮園の造営でも知られる人物で、さらに日光東照宮の改修総奉行を務めた経験を持ちます。この経験を活かし、地元の甲良大工を動員して、長寿院の建立にあたりました。特に弁財天堂は、各所に彫刻が施されており、その豪華さから「彦根日光」とも称されるほどです。
寺院建立の際、藩内のすべての領民に一文ずつの寄進が呼びかけられ、最終的に25万9526人にものぼる人々から寄進が集まりました。現在もその寄進帳は大切に保管されており、当時の人々の熱意と信仰の深さが窺えます。
かつて長寿院の麓には、琵琶湖の内湖である松原内湖が広がっており、風光明媚な景観を楽しむことができました。また、当院の南には、井伊家ゆかりの「井伊神社」と「龍潭寺」があります。さらに、楼門からは彦根城が真正面に見え、壮大な眺望を楽しむことができます。
長寿院の弁財天堂は、元禄8年（1695年）に建立され、国の重要文化財に指定されています。権現造りの本堂、石の間、礼堂で構成されており、その豪華さと歴史的価値は高く評価されています。
阿弥陀堂は同じく元禄8年に建立され、滋賀県指定有形文化財に指定されています。特に阿弥陀堂前の踏み石の下には、西国三十三所、坂東三十三箇所、秩父三十四箇所を含む百ヶ所の観音霊場と、諸国の霊仏霊社のお砂が埋められており、霊場巡りの精神を象徴しています。
奥内宮は「白蛇光明王」を祭神とし、天保13年（1842年）に井伊直亮によって建立されました。白蛇は神秘的な力を持つとされ、白蛇殿はその信仰の象徴となっています。
奥之院には「宇賀神」が祀られており、安永4年（1775年）に井伊直幸によって建立されました。宇賀神は財運や幸福をもたらす神とされ、信仰を集めています。
庫裏宝蔵は、元禄8年に建立された歴史ある建物で、滋賀県指定有形文化財に指定されています。校倉造で建てられており、全国的に見ても非常に古い建築物で、保存状態も良好です。
経蔵は元禄12年（1699年）に建立され、全国で8番目に古い経蔵として知られています。この建物には経典が納められており、信仰の中心となっています。
楼門は二天門とも呼ばれ、楼上には甲冑を身に着けた大黒天が祀られています。これは非常に珍しい光景で、訪れる人々に深い印象を与えます。
子安地蔵堂は、子供の健やかな成長を祈願する場所として知られ、多くの参拝者が訪れます。
長寿院には、数多くの文化財が存在し、歴史的価値が高いものが多く残されています。
長寿院の周辺には、他にも多くの観光スポットがあります。特に「びわ湖百八霊場」や「近江七福神めぐり」の一環として訪れることができる名所が多くあります。
びわ湖百八霊場の一つとして、長寿院は第54番札所に位置しています。周辺には第53番札所の「青岸寺」や第55番札所の「龍潭寺」があり、観音霊場巡りの一環として訪れることができます。
近江七福神の一つである「弁財天」を祀る寺院としても知られています。彦根市内の他の名所とともに巡ることで、さらなるご利益を得ることができるとされています。
長寿院へのアクセスは、JR彦根駅から徒歩またはバスで訪れることができます。また、周辺には駐車場も整備されているため、車での訪問も可能です。
長寿院は、歴史と文化が融合した貴重な寺院であり、訪れる人々に静寂と感動を与えます。寺院の荘厳な建物や美しい彫刻、さらに多くの文化財は、訪問者に深い印象を残すことでしょう。ぜひ滋賀県彦根市を訪れた際には、長寿院を訪れて、その歴史と美しさを体感してください。