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ダイニックアストロパーク天究館

(てんきゅうかん)

ダイニックアストロパーク天究館は、滋賀県犬上郡多賀町に位置する天文台です。この施設は、繊維製品メーカーであるダイニック株式会社が社会貢献の一環として設置し、民間企業による公開天文台としては珍しい存在です。天究館は、天体観測を行うだけでなく、一般向けの観望会や展示も行っており、訪れる人々に宇宙の魅力を伝える場として広く利用されています。

天文台の設立背景と概要

天究館は1987年8月18日、ダイニック滋賀工場の敷地内に開館しました。これは、滋賀県内での社会還元事業の一環として、一般にも公開されています。設立当時の社長、坂部三次郎氏は、少年時代からの星好きであり、その夢を実現する形で工場の裏山に天文台を開設しました。また、同社の社員であった米田康男氏が初代館長に任命され、天文台の運営がスタートしました。

展示室と観測室

天究館の1階は天体に関連する展示室となっており、ここには中国最古の星図である「蘇州天文図」の拓本や、アメリカ・アリゾナのバリンジャー・クレーターから採取された鉄隕石、メキシコのトルカ隕鉄の標本などが展示されています。また、天文台で撮影された天体の写真も展示され、来館者は宇宙の広大さを感じることができます。

2階には屋上にドームを備えた観測室があり、一般の来館者にも公開されています。天文台のメインの機材である60cm望遠鏡を使って、天体観測が可能です。

観測機器

60cm反射望遠鏡

天究館の観測室には、西村製作所製のニュートン式/カセグレン式兼用の口径60cm望遠鏡が設置されています。主鏡は特殊光学研究所の苗村敬夫氏が製作し、架台はコンピューター制御のドイツ式赤道儀を採用しています。この望遠鏡は、分解能が0.19秒角、集光力は7,350倍とされ、肉眼では観察できない星々を詳細に観測することが可能です。また、サブスコープとして口径20cmのケプラー式望遠鏡も装備されています。

31cm望遠鏡

1934年に製作されたこの望遠鏡は、西村製作所によるもので、主鏡は木辺成麿氏が研磨しました。この31cm反射望遠鏡は、長年にわたり天体観測に利用されてきた歴史的な機器で、特に微光の変光星や火星面の観測に活躍しました。

25cmシュミット式望遠鏡

1989年に設置されたシュミット式望遠鏡は、主に彗星や小惑星の観測に用いられてきました。この望遠鏡は、天究館友の会有志の協力で設置され、新彗星の出現確認や300個以上の新小惑星の発見に貢献しました。

その他の望遠鏡

天究館は、60cmや31cmの望遠鏡に加え、10cmから40cmの小型望遠鏡や、大型双眼鏡も複数所有しています。これらの望遠鏡は、一般の来館者が利用できるよう開放されており、観望会などで活用されています。

天究館の見どころ

エントランス・ロビー

天究館のロビーに入ると、まず目に飛び込んでくるのは、ダイニック創業者・坂部三次翁の肖像です。ゆったりとしたソファに座って、星に関するビデオを鑑賞したり、星にまつわる情報交換を楽しむことができます。また、88星座スタンプ集めは来館者に人気のアクティビティです。ロビーには天文グッズのお土産売り場もあり、星に関連するアイテムを購入することができます。

Cosmos(モニュメント)

ダイニックグループの将来の発展と成長を象徴する「Cosmos」というモニュメントも天究館に展示されています。この作品は、透明なアモルファス水晶カレットを用いて制作され、中央に立つ円錐が厳粛で崇高な姿を表現しています。また、その無限に広がる形状は、宇宙の広がりを象徴しています。

モザイク太陽系

天究館には、太陽系の惑星の大きさを10億分の7に縮尺して表現した「モザイク太陽系」もあります。この作品は、滋賀県の伝統産業である信楽焼きを用いて作られており、太陽系の壮大さを来館者に伝えます。

蘇州天文図(拓本)

中国最古の星図の1つである「蘇州天文図」は、南宋時代に黄裳という人物によって作られました。11世紀末の観測に基づくとされ、天体の位置を詳細に記録した貴重な資料です。この拓本は、天究館の展示室で見ることができます。

隕石の展示

天究館では、隕石の展示も行われています。アリゾナ隕石孔で採取された12.2kgの隕鉄や、メキシコ産のトルカ隕鉄など、貴重な隕石を間近で見ることができ、宇宙の神秘に触れることができます。

天球儀

天究館の屋外には、直径6メートルの巨大な天球儀が設置されています。この天球儀は、北極星を中心に星が1日かけて一周する様子を視覚的に分かりやすく表現しており、実際の夜空と重ね合わせて星の動きを学ぶことができます。

天究館の歴史的な功績

天究館は、2003年3月29日に民間の天文台として初めて、ガンマ線バースト残光の撮影に成功しました。また、2005年11月30日には、環境省より団体部門で大気保全活動功労者として表彰され、環境保護にも貢献しています。

このように、ダイニックアストロパーク天究館は、天文観測の研究施設としてだけでなく、一般の来館者にも宇宙の神秘を提供する施設として、多くの人々に愛されています。

Information

名称
ダイニックアストロパーク天究館
(てんきゅうかん)

彦根・近江八幡

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