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水口神社(甲賀市)

(みなくち じんじゃ)

滋賀県甲賀市にある水口神社は、歴史ある神社で、例祭として水口曳山祭を行うことで知られています。この神社は、式内社として認められており、旧社格は県社に位置付けられています。

神社の概要と歴史

社名の変遷

中世においては「山王新宮」と称されていました(『藤川記』)。しかし、近世になると「大宮大明神社」と呼ばれ(『近江輿地志略』)、現在でも地元では「大宮さん」という愛称で親しまれています。社名の変遷を通じて、地域の信仰の中心であり続けてきたことがうかがえます。

祭神とその由来

本殿の主祭神は、大水口宿禰命(おおみなくちのすくねのみこと)で、相殿には大己貴命、素盞嗚尊、稲田姫命の三柱が祀られています。大水口宿禰命は、物部氏の同族である穂積臣等の祖とされる人物です。これに関連して、当地に住んでいた物部氏の一族が祖先を祀ったと考えられています。

また、神社が鎮座する地は、甲賀郡の中心部に位置しており、古くから農耕の神としての役割も担っていたと推測されています。神社周辺には、古墳時代の遺跡が点在しており、地域の歴史的な重要性も高いことがわかります。

歴史的な背景

水口神社の歴史は、社伝によれば垂仁天皇の時代まで遡ります。稲田姫命が天照大神の神鏡を奉じて近江に入り、族長であった矢田部宿祢蔵田麿に神鏡を鎮座させるべき場所を尋ねたところ、甲可日雲宮が最適であるとの答えがあり、現社地に至ったとされています。この伝承は、伊勢神宮の倭姫命の巡幸伝承を基にしていると考えられています。

また、社伝によれば、甲賀郡内での物部氏一族の影響力が強かったことから、神社の創祀はこの一族が関与しているとも考えられています。『日本三代実録』には、貞観元年(859年)に水口神社が従五位上に昇叙された記録があり、延喜の制で国幣小社に列したことがわかっています。

水口神社の特徴

社殿の再建と修復

江戸時代には、社殿が度々再建されました。寛文3年(1663年)には幕府の代官である小堀仁右衛門が郷民に命じて社殿を再建し、その後も元禄10年(1697年)には拝殿が修復されました。さらに、正徳5年(1715年)には水口藩主の加藤嘉矩が社殿の荒廃を嘆き、再び社殿を造営させました。こうした背景から、神社は藩主や地元の人々により保護されてきたことがわかります。

近代における神社の発展

明治時代に入ると、1876年(明治9年)に水口神社は郷社に列し、1894年(明治27年)には境内の拡張とともに社殿の再建が始まり、1897年(明治30年)に竣工しました。その後、1924年(大正13年)には県社に昇格し、地域における重要な神社としての地位を確立しました。第二次世界大戦後は、神社本庁に属しています。

水口曳山祭とその伝統

水口曳山祭とは

水口神社の代表的な神事である水口曳山祭は、毎年4月20日に行われます。この祭りは、水口町内から曳山が奉納されるため「水口曳山祭」とも呼ばれ、滋賀県の指定無形民俗文化財にも指定されています。曳山とは、祭礼の際に曳かれる豪華な山車のことで、華やかな装飾が施されています。

曳山祭の歴史

曳山祭は、延宝の頃(17世紀後半)に旱魃に対する雨乞祭として始まったと言われています。当時は藩主の親拝や代参が行われ、地域の重要な行事として続けられてきました。現在も、地域住民によってその伝統が守られ、毎年盛大に開催されています。

境内と文化財

境内の施設

水口神社の境内には、鳥居や本殿をはじめ、武雄神社、玉津米神社、水口恵比須神社、日枝神社などの摂社が点在しています。本殿は1897年(明治30年)に再建されたもので、一間社流造の形式です。また、拝殿は弘化元年(1844年)に再建されたもので、入母屋造の特徴を持っています。

重要文化財

水口神社には、国の重要文化財に指定されている「木造女神坐像(じょしんざぞう)」があります。この像は鎌倉時代の作とされ、1911年(明治44年)に古社寺保存法に基づき国宝に指定されました。像高は22.2cmで、垂髪で両手を袖に入れ、素朴な作風が特徴です。

その他の文化財

また、石灯籠は南北朝時代の康永元年(1342年)の刻銘があり、その製作年代が明確にわかる貴重な遺物です。これらの文化財は、神社の歴史と共に大切に保存されています。

水口神社の現代における役割

水口神社は、地域における信仰の中心であり続けており、年間を通じて多くの参拝者が訪れます。例祭の水口曳山祭は、地域住民が一体となって参加する大規模な祭りであり、伝統文化の継承が行われています。神社はまた、歴史的な遺産としても評価され、文化財の保存や修復が進められています。

このように、水口神社は古代からの歴史を持ちながらも、現代においても地域社会に根付いた重要な神社としての役割を果たしています。訪れる人々は、神社の荘厳な雰囲気と共に、その歴史と文化に触れることができるでしょう。

Information

名称
水口神社(甲賀市)
(みなくち じんじゃ)

甲賀・信楽

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