玉桂寺は、滋賀県甲賀市信楽町勅旨に位置する高野山真言宗の仏教寺院です。山号は秋葉山、院号は十輪院で、正式には秋葉山十輪院玉桂寺と称されます。古い歴史を持ち、淳仁天皇の離宮跡地に建てられたとされ、歴代天皇の勅願寺にもなった由緒ある寺院です。
寺伝によれば、玉桂寺の歴史は奈良時代にまでさかのぼります。淳仁天皇が平城京の北に造営した離宮「保良宮」の跡地に、弘法大師空海が開いたとされています。その後、文徳天皇と後花園天皇の勅願寺として定められ、さらに信仰を集める寺院となりました。
玉桂寺には「一願成就大不動明王」という高さ13メートルの大きな不動明王像が鎮座しています。この像は、多くの参拝者が願いを託し、一つの願いを成就させると伝えられています。特に健康や家族の安全、商売繁盛などの願いごとで訪れる人々が多いです。
玉桂寺には、滋賀県指定の天然記念物である「高野槙」があります。この高野槙は樹齢500〜600年、高さ29メートルを誇り、その壮大な姿は訪れる人々に強い印象を与えます。長い年月を経て、静かにその場に立ち続ける高野槙は、玉桂寺の歴史を見守ってきた象徴的な存在です。
玉桂寺には多くの文化財が伝わっています。その中でも特に注目すべきは、鎌倉時代の1212年(建暦2年)に作られた木造阿弥陀如来立像です。この像は、法然の弟子である源智が、法然の一周忌に際して発願したものであり、像内に納入されていた願文からもその由来が確認できます。1981年(昭和56年)には重要文化財に指定されました。
また、結縁交名と呼ばれる書類も像内に納入されており、数万人の人物がこの阿弥陀如来像に結縁したことが明らかになっています。作風は快慶風であるものの、作者は快慶ではなく、その弟子筋の仏師であったと推定されています。
玉桂寺には、甲賀市指定文化財もいくつか存在します。中でも注目されるのが、平安時代に作られた「木造阿弥陀如来坐像」と、室町時代に作られた「木造五劫思惟阿弥陀如来坐像」です。どちらもその時代を代表する貴重な仏像で、信仰の対象として現在も多くの人々に親しまれています。
また、1316年(正和5年)に作られた石造五輪塔も、玉桂寺の見どころの一つです。この五輪塔は鎌倉時代の仏教文化を象徴するものであり、その美しい石彫技術が今もなお高く評価されています。
玉桂寺の本堂である玉樹本堂は、荘厳な雰囲気に包まれ、参拝者に静かな祈りの場を提供しています。寺院内にはその他にも山門や宝篋印塔などが点在しており、散策しながら歴史を感じることができる魅力的な場所です。
前述した「一願成就大不動明王」は、玉桂寺の中でも特に目立つ存在です。その迫力ある姿は、参拝者の心を引きつけ、祈りを捧げる場として広く親しまれています。
玉桂寺の境内には、滋賀県指定天然記念物の「コウヤマキ」がそびえ立っています。この高野槙は、長い年月をかけて成長し、現在でもその美しい姿を保っています。寺院を訪れる際には、ぜひこの木の前で静かな時間を過ごしてみてください。
玉桂寺は、滋賀県甲賀市信楽町勅旨891に位置しています。交通アクセスも良く、信楽高原鐵道の玉桂寺前駅から徒歩5分の距離にあり、JR石山駅からは帝産バスで約50分、「沢出」バス停から徒歩10分の場所にあります。車でのアクセスも便利で、新名神高速道路信楽ICからは車で約10分です。
玉桂寺の周辺には、信楽焼で有名な信楽町や、美しい自然が広がる甲賀の里など、観光名所が点在しています。玉桂寺を訪れた際には、これらのスポットも一緒に巡ることで、より充実した旅を楽しむことができます。
玉桂寺は、その歴史的背景や文化財の豊かさ、自然の美しさが融合した、滋賀県甲賀市の貴重な観光スポットです。奈良時代から続く由緒正しい寺院として、参拝者を迎え続けており、一願成就の不動明王や貴重な文化財が多くの人々を魅了しています。甲賀市を訪れた際には、ぜひ玉桂寺にも足を運んで、その歴史と文化に触れてみてください。