白鬚神社は、滋賀県高島市鵜川に位置する、国史見在社で旧社格は県社の神社です。全国にある「白鬚神社」の総本社とされ、琵琶湖に面した立地から「近江の厳島」とも称されています。
白鬚神社は琵琶湖畔に立地し、湖に浮かぶようにそびえる大鳥居が特徴です。鳥居は沖島を背景に、神社の神聖な雰囲気を引き立てています。白鬚神社は「琵琶湖とその水辺景観－祈りと暮らしの水遺産」として2015年に日本遺産に認定されました。
白鬚神社の神紋は「左三ツ巴」で、別称として「白鬚大明神」や「比良明神」とも呼ばれます。この神社は比良山に関わりが深く、その山を神体山として崇める信仰もあります。
白鬚神社の祭神は猿田彦命（さるたひこのみこと）で、「白鬚明神」や「比良明神」とも称されます。猿田彦命は近江国の地主神とされ、古来より地域の信仰を集めてきました。
白鬚神社は、垂仁天皇の時代に倭姫命によって創建されたと伝えられています。近江最古の大社とされ、また天武天皇の勅により「比良明神」の号を賜ったともいわれます。白鬚信仰は近江だけでなく、武蔵国北部や筑前国にも広がり、多くの信者がこの神社を拠り所としています。
白鬚神社の神体山である比良山は、古代から信仰の対象とされてきました。背後の山中には横穴式石室や磐座、古墳群が残されており、これらは白鬚信仰と密接な関連があると考えられています。
白鬚神社の本殿は、1603年に豊臣秀頼の命により再建されました。桃山時代の特徴を示す建築様式で、檜皮葺の屋根が施されています。明治時代には拝殿が増築され、本殿と拝殿が一体化した権現造の様式に改められました。
現在の拝殿は1879年に再建されたもので、四棟造の造りです。また、寛永元年（1624年）に大溝藩主の分部光信が造営した旧拝殿は、現在は絵馬殿として使用されています。
社務所は1932年に造営された建物で、中世を思わせる書院造の造りが特徴です。国の登録有形文化財に指定されています。
社務所の前には、与謝野鉄幹と晶子夫妻が参拝時に詠んだ歌碑が建てられています。「しらひげの 神のみまへに わくいづみ（上の句：鉄幹）」「これをむすべば ひとの清まる（下の句：晶子）」といった内容で、神社の神聖さが詠まれています。
石段を登った南側には、紫式部が父・藤原為時に従い近江を通った際に詠んだ和歌の碑があります。この歌碑は、当時の琵琶湖周辺の情景と都への思いを表しています。
境内には、松尾芭蕉の「四方より 花吹き入て 鳰の湖」など、多くの句碑が建てられています。これらは、琵琶湖の美しさや比良山の厳しさを詠んだもので、訪れる人々に深い感慨を与えています。
白鬚神社のシンボルである湖中の大鳥居は、もともと陸上に建てられていましたが、琵琶湖の水位上昇に伴い現在の位置に立つようになったとされています。この大鳥居は観光客に人気ですが、国道161号を横断する際の事故が問題となっています。神社側では横断禁止を呼びかけるとともに、地元のロータリークラブが撮影台を設置するなどの対策を講じています。
白鬚神社の境内には11社の摂末社が鎮座しています。特に「上の宮」と呼ばれる10社と、「若宮神社」などがあり、いずれも豊臣秀頼の時代に再建されました。これらの神社は高島市指定の有形文化財として保存されています。
若宮神社は、豊臣秀頼の命により再建されたもので、一間社流造の杮葺の社殿が特徴です。高島市指定の有形文化財に指定されています。
内宮である皇大神宮と外宮である豊受大神宮も、いずれも豊臣秀頼の命により再建されたものです。こちらも高島市指定の有形文化財に指定され、白鬚神社の歴史と信仰を象徴する存在です。
八幡三所社は三社相殿の形式で、こちらも豊臣秀頼によって再建されました。境内には、ほかにも多くの神社があり、訪れる人々に多様な信仰の形を伝えています。
白鬚神社は滋賀県高島市に位置し、琵琶湖の風光明媚な景色とともに、多くの観光客や信者を惹きつけています。公共交通機関や車でのアクセスが可能ですが、訪問時には交通安全にも配慮することが重要です。
白鬚神社は、古代からの歴史と信仰を背景に、琵琶湖畔の美しい景観とともに存在し続けています。その湖中に立つ大鳥居や、歴史的な社殿、数々の歌碑や句碑は、訪れる人々に神聖な空気と平安をもたらします。長い歴史と地域の信仰を感じるこの場所は、琵琶湖を訪れる際に一度は足を運びたいスポットです。