大溝陣屋は、かつて近江国高島郡（現在の滋賀県高島市勝野）に所在した大溝藩の藩庁であり、今もなお歴史的な価値を持つ遺構が残されています。江戸時代の歴史や地域の発展を伝える重要な史跡として、観光客にも親しまれています。
元亀3年（1572年）、織田信長が高島郡に進攻し、地域の支配を進めました。その後、天正7年（1579年）に信長の家臣である津田信澄が高島郡を領することになり、大溝城が築かれました。大溝城の設計は明智光秀によるとされ、当時の戦略的拠点として重要視されていました。
天正10年（1582年）の本能寺の変で、信澄は明智光秀の娘を正室としていたこともあり、反信長派と見なされ大坂で殺害されました。その後、大溝城の城主は丹羽長秀、加藤光泰、生駒親正、京極高次と次々に交代しました。京極高次が近江八幡へ転封された後、大溝城は無城主の状態となります。
元和5年（1619年）、分部光信が伊勢国上野から2万石で大溝に入封し、大溝藩が成立しました。しかし、この時代には一国一城令が発布されていたため、大溝城は破却され、三の丸部分のみを残して取り壊されました。その後、分部氏は三の丸に藩庁である大溝陣屋を構え、代々11代にわたり大溝藩を治めることとなりました。
大溝陣屋の遺構としては、現在「総門」と呼ばれる長屋門が残されています。これは武家屋敷地への出入り口であったと考えられており、宝暦5年（1755年）に大規模な改修が行われました。この門は長らく民家として使用されていましたが、現在は高島市が買い上げ、地域の有形文化財に指定されています。
2015年（平成27年）4月24日には、「琵琶湖とその水辺景観－祈りと暮らしの水遺産」の一部として、大溝陣屋も構成文化財のひとつとして日本遺産に認定されました。この認定により、大溝陣屋はさらに注目を集める観光地となり、歴史と文化を学ぶ場として多くの人々に親しまれています。
大溝陣屋へのアクセスは、JR西日本の湖西線「安曇川駅」からのアクセスが便利です。駅からは徒歩やバスでのアクセスが可能で、周辺の観光スポットを巡る拠点としても利用されています。
大溝陣屋周辺には、琵琶湖の美しい風景を楽しめるスポットが多くあります。歴史と自然を満喫しながら、滋賀県高島市の魅力を存分に味わうことができます。