沖の白石（おきのしらいし・おきのしろいし）は、琵琶湖の沖合に浮かぶ神秘的な岩で、「化石（ばけいし）」「お化け石（おばけいし）」「船木三ッ石（ふなきみついし）」といった別称でも知られています。琵琶湖国定公園の特別保護地区に指定され、その独特の景観が多くの人々を魅了しています。
沖の白石は、滋賀県彦根市にある多景島の西方約5km、または高島市にある船木崎の東方約5kmの沖合に位置しています。この岩は、1つの大きな岩と3つの小さな岩で構成されており、琵琶湖の水面から突き出したその姿が印象的です。周辺の水深は約80mに達し、大岩の高さは地上で約20mにおよぶため、岩の全長はおよそ100mに達するものと推測されています。
沖の白石という名前には、いくつかの由来があるとされています。以下の二説が主に知られています。
日没時、夕日の光を浴びた岩が白く輝くように見えるため、この名がついたという説があります。琵琶湖の静寂の中で、日没の美しい景色に溶け込む沖の白石の姿は、見る人に幻想的な印象を与えます。
沖の白石には多くの鳥が飛来し、長い年月の間にその糞が岩に付着して堆積し、白くなったことが名前の由来とする説もあります。鳥の活動が生み出した自然の変化が、岩に独特の外観を与えています。
沖の白石は「化け石」とも呼ばれ、その名称には不思議な由来があります。見る角度によって、岩の枚数が1枚から4枚まで変わるように見えることから、まるで岩が化けているかのように見えるため、この名がつけられました。琵琶湖を航行する船舶の方角の指標としても利用されているため、地元では神秘的で頼りになる存在として知られています。
沖の白石は、琵琶湖を航行する船にとって大切な方角の目印となっています。しかし、日没以降は視認が難しくなるため、船舶が誤って衝突するリスクがあることに注意が必要です。湖上の安全を守るため、航行する船舶は十分な警戒を求められています。
沖の白石の名を冠した銘菓も地元で親しまれています。その銘菓「沖の白石」は、カスタードクリームをカステラ生地で包んだ洋風の焼き菓子で、観光客の間でも人気があります。琵琶湖を訪れる際には、この特産品を手にとってみるのも旅の楽しみの一つとなるでしょう。
沖の白石の周辺には、カワニナの一種である「シライシカワニナ（Biwamelania shiraishiensis）」が生息しています。この貝は沖の白石にちなんで命名され、琵琶湖のこの地域のみで確認される貴重な固有種です。シライシカワニナは環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、その存在は生態系の保護においても重要視されています。
琵琶湖には沖の白石の他にも、歴史的・文化的に重要な名所が点在しています。以下に琵琶湖周辺の主な名所をご紹介します。
琵琶湖に浮かぶ沖島は、日本で唯一の淡水湖にある有人島として知られ、自然豊かな景観と古い歴史を持つ場所です。琵琶湖の豊かな自然環境の一部を体感できるスポットで、多くの観光客が訪れています。
沖の白石の近くにある多景島は、湖上に浮かぶ小さな島で、季節や天候に応じてさまざまな表情を見せることから「多景」の名がつけられました。神社や展望スポットもあり、観光地としても人気の場所です。
琵琶湖に浮かぶ竹生島は、古くから「神の島」として信仰の対象となってきた神聖な場所です。神社や寺院が点在し、多くの参拝者が訪れる名所となっています。竹生島は、琵琶湖八景の一つとしても知られ、その美しい風景が人々を魅了します。
矢橋帰帆島は、琵琶湖に浮かぶ人工島で、地元住民に親しまれている場所です。公園やキャンプ場が整備されており、家族連れでのレジャーやリクリエーションの場として人気です。
沖の白石は、琵琶湖の自然環境と地域文化の結びつきを象徴する存在です。その神秘的な佇まいと、日没時に見せる白く輝く姿は、多くの人々に琵琶湖の自然美を再認識させてくれます。また、シライシカワニナをはじめとする固有種の存在や、湖上での安全な航行に対する意識の重要性も、沖の白石を通じて広く知られています。
琵琶湖に浮かぶ沖の白石は、地元の人々や観光客に愛される神秘的な岩で、その独特の自然環境や歴史的価値は、琵琶湖の魅力をさらに引き立てています。琵琶湖を訪れる際には、沖の白石の存在に思いを馳せ、その魅力を存分に感じ取ってみてはいかがでしょうか。